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人材育成

質的研究法「M-GTA」を活用した研修プログラム設計(第3回)

第3回となる今回は「データの分析手法」についてご紹介いたします。
M-GTAで肝となる「概念の生成」、「カテゴリーの生成」について、初学者である自身が悪戦苦闘した実体験を交えて説明させていただきます。

データの分析①:概念の生成(分析ワークシートの作成)

M-GTAにおける「概念」とは、理論を構成する最小単位です。複数の概念を生成し、そこから理論を導き出すことになります。
「概念って一体何だ?」というのが、最初の私の疑問でした。分析をしてみた今、自分なりの理解として「分析から定義を導き出し、その定義に自分らしい命名をしたもの」と捉えています。自分らしいという部分がポイントかなと思っています。
概念を生成する際には「分析ワークシート」を使用し、概念の数と同じ数の分析ワークシートを作成することになります。分析ワークシートの項目と記入内容は、以下のとおりです。
バリエーションは「定義の元となったインタビューの生データ」であり、私の場合ですと1つの概念につき7つのバリエーションを挙げておりました。

ここからは、概念の生成(=分析ワークシートの作成)において、重要となる点を自身の実体験を踏まえながら、紹介させていただきます。初学者の私が最初に作成した8つの概念を社内で共有した際、「浅い」、「物足りない」とのフィードバックを受けました。
そのときの概念の特徴としては、「一般論の延長線から脱することができていない」「独自性を感じられない」「定義とバリエーションのつながりが弱い」「無理に紐づけている」といったものでした。
そこから、私が意識して取り組んだことは、以下の2つでした。

◆幾通りの解釈を検討する
概念は、どんどん新しいものを生成することに終始するのではなく、その一つ一つの完成度を上げていくことが重要だと感じました。
私の失敗例でいうと、「2つの概念として解釈できるものを一括りにしてしまっていた」、「数多く作ることが目的化してしまい、自身の思い込みで勝手に概念を生成してしまった」というものがあります。
いずれの失敗も、「バリエーションの解釈の積み重ねが不十分だったこと」に起因したものでした。
その後は、幾通りの解釈を検討することを徹底するように、自分に言い聞かせて分析を行いました。分析に費やす時間は長くなりましたが、着実に概念が洗練されていく手応えも同時にありました。

◆分析焦点者の視点で解釈する
第2回の「分析焦点者の設定」の際に少しだけ触れましたが、概念の生成時では「分析焦点者の視点」でデータの意味の解釈を行っていくことが重要と言われています。
前述の「完成度を上げていく」という点で、私自身が最も意識したことです。
耳の痛いフィードバックを受けたのちは、インタビュー時の様子を思い起こしながら、インタビューデータに向き合うようにしました。「どんな表情で、どんな声色で、どんな流れで、その発言に至ったのか」、というところまで思い起こすことを通じて、複数の方が同じ言葉を使っていても、その意味合いの解釈が異なることが分かりました。その結果として、定義とバリエーションの繋がり強化はもちろん、概念名も一歩踏み込んだ独自性がある命名ができるようになりました。

試行錯誤しながらも、概念の統廃合・修正を重ねていき、最終的に12個の概念が完成しました。

データの分析②:カテゴリーの生成

カテゴリー化は、概念の相互の比較から関係性を見出し、理論化を進めていくことです。

この作業は、単なるグルーピングとは異なり、①分析テーマにつながるカテゴリーを見出すこと、②カテゴリーの相互の比較から関係性を見出すことが重要となります。まさにこの2つのポイントが、初学者の私にとっての大きな壁になりました。

◆グルーピングからの脱却
私が最初に作った「カテゴリー(自称)」は、完全にグルーピングでした。その後も「カテゴリー化」にトライしつづけましたが、なかなかグルーピングの域を超えるものが出来ませんでした。そこから改めて書籍を読み返し、分析テーマに立ち返り、「プロセス性」という観点でカテゴリーの生成をしました。そこで初めて、「グルーピングとは違うもの」を作れた手応えを感じました。

◆各カテゴリー間の関係性
「各カテゴリー間の関係性」を見出すことは、非常に苦労しました。関係性がうまくつながっていない際には、カテゴリー自体の見直すことになり、何度もこのプロセスを繰り返すうちに完全に行き詰ってしまいました。
そこで、上司と一緒に会議室にこもって、この壁を乗り越えるべく、議論を重ねました。
議論の末、以下の分析結果となりました。

①行動プロセスとなっている3つのカテゴリーと行動プロセスに含まれない1つのカテゴリー(以降、カテゴリーA)の4つのカテゴリーを生成
②カテゴリーAと他の3つカテゴリーとの関係性は無いと整理。カテゴリーAに含まれる3つの概念が独立して、3つのカテゴリーとの関係性を有する。
この整理は、M-GTAのメソッドに照らして正しくないかもしれません。しかし、実践的な観点から、今回は受け手が理解しやすい整理に着地させました。

12の概念と4つのカテゴリーの分析結果をもって社内プレゼンを行い、無事に承認をもらうことができ、具体的な研修プログラムの設計フェーズに進むこととなりました。

次回の分析に向けて

レポートの執筆するにあたり、改めて書籍を読み返し、学び直しをしました。新たな気付きもあり、次回の分析では、以下の2点を更に意識したいと思います。

①プロセス性への意識
今回の学び直しを経て、M-GTAは「プロセス性」を重要視する研究手法であることをあらためて認識しました。次回は分析テーマにおいて「プロセス性」を強く意識してみます。

②インタビューデータの逐語録化
今回のインタビューでは、録音はせず、その場で上司と共にメモを取りながら、データを収集しておりました。その際に、ところどころメモが議事録的な「意訳」になってしまっていました。今回は上司にカバーしてもらいましたが、次回は録音データから逐語録を作成するなど、気を付けたいと思います。

長文にお付き合いいただきありがとうございました。
次回は最終回となりまして、分析結果を用いた研修プログラム設計についてお話ししたいと思います。

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