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誰でもできる!ケーススタディ作成のコツ④(全5回)

前回はケースライティングのポイント(前編)として、外注する場合と内製する場合のそれぞれの注意点、ケースメソッドと事例研究の違いについてご紹介しました。今回は後編として、ストーリーの組み立て方や設問の立て方についてご紹介します。尚、記載内容は当社内での事例ですので、あくまで一つの参考情報としていただければ幸いです。

ストーリーの全体構成

最初にケースを書き始める前に全体のストーリー構成を描きます。ケーススタディは、受講者が当事者意識を持てるかどうかが学習効果を左右します。ストーリーを研修対象者の視点で作成すると、受講者が当事者意識をもって参加しやすくなります。主人公は一般的に案件当事者が多いですが、研修対象者によって、案件当事者の上司や部下、その他、案件を取り巻く関係者の目線で作成することもあります。
次に章立ての目次を作成すると全体の流れをイメージしやすくなります。ビジネスケースを作成する際は、案件の着想から完成に至るまでのプロセスを起承転結で、それぞれの局面での課題を盛り込みながら作成します。通常は案件着想時の背景から入ると、読み手が全体感を把握しやすくなるため、ケースの冒頭は案件当事者の置かれた環境やビジネス概況を記載し、以降、案件完遂に至るまでのプロセスを時間の経過とともに記載にします。
みなさんがイメージしやすいように、私たちが作成したケースの代表的な章立てと各章でのポイントについてご紹介します。

① 案件を着想した背景(業界概要や職場環境等)
まず、ケースの冒頭は案件を着想した背景から記載します。一般的に、案件の起点には課題があります。課題とは理想のあり姿と現状のギャップです。着想の背景となる当事者の想いや理想とその当時の状況とのギャップを記載し、案件の課題感を明確にします。書き始めるまえに、まずは書籍、インターネット等で業界の理解を深めます。インタビューでは、現場の状況や当事者の想い等、公知の情報では把握できないことを中心にヒアリングし補いながら、課題を踏まえて状況を記載します。当事者の経歴も併せて記載すると、案件着想に至るまでの経緯や当事者の想いの裏側にある背景がより明確になります。定量的なグラフを参考資料や写真を添付すると読者はより業界を理解しやすくなります。

② 案件の実行プロセス
案件の着想から完成に至るまでのプロセスを記載します。特に案件を進めていく中での苦労や立ちはだかった壁、その壁を乗り越えたストーリーは、実務を推進する上で参考になったとの声をよく耳にしますので、意識して記載するようにしています。
また、ラーニングポイントを意識しながらストーリーを作成すると、受講者の気づきが深まります。例えば、ケースのラーニングポイントを「コミュニケーションの重要性」に設定した場合、ケースの冒頭はコミュニケーションの状況や課題を説明し、次に案件当事者が、その課題をどのように受け止め、上司、部下、関係者に対してどのように働きかけたか、苦労した点や工夫した点を含め、その結果どのような改善が図られたかを記載します。

③ 案件の完成
案件を完遂したことで、どのような成果が得られたかを記載します。成果も受講者の実務で活かされることが多く、ラーニングポイントに直結します。ここでのポイントは案件の推進が、組織にどれだけ貢献したという視点(組織の視点)のみならず、個人の成長にどれだけ影響を与えたかという視点(個人の視点)もあわせて記載すると読者の興味を引き付けることができます。また、案件の完成前後の感情の動きも記載すると、読者はより一層、当事者意識をもって読み込めます。ケーススタディでは、参加者の当事者意識が学習効果を大きく左右します。

④ 現状・今後の課題
ケースの最終章は案件完遂後の現状の課題を記載し、今後の対策を考察してもらうようにします。案件、課題はある定点での出来事であるため、時間の経過とともに取り巻く環境は変化し、記載内容は陳腐化していきます。その為、ケース作成後に大きな環境変化があった場合は、アフターストーリーとして情報を追加していくことがあります。受講者はケースが古くなると現状にはあてはまらないと考える傾向になりがちですが、Bケースを追加することでケースそのものの賞味期限を延ばすことができます。

以上、各章でのポイントについて述べてきました。ケースライティングは、全体をとおして課題(あり姿と現状のギャップ)に始まり、課題解決に終わることを意識して作成するとストーリー構成が描きやすくなります。

適切なページ数

ちかごろ、ケースの最適なページ数は7~8頁と言われています。一昔前までは、多くのビジネススクールでは20枚近くのケースを扱うことが一般的でしたが、最近は読み手の負荷を考慮し、内容を端的にまとめることが良いとされています。近年は研修のオンライン化の流れを受けて、焦点が絞られた1~3頁のショートケースも増えつつあります。

ケーススタディの設問の立て方

設問はラーニングポイントにも紐づくため、ケースライティングの前段階に設定し、インタビューでヒアリングしながらライティングに反映します。設問数は、3~4が一般的です。最初の設問は、受講者が誰でも答えられて、なるべく多くの意見がでてくる内容を設定します。研修の冒頭は受講者が緊張しているので、受講者から多くの回答を引き出して、話量を増やすことに重点を置きます。後半にかけて、ラーニングポイントを深く考察する質問を設け、最後は研修での学びを実務にどのように生かすかを問える設問とします。基本的に研修は、受講後の行動変容(研修転移)を狙いとしていますので、実務につなげる設問は重要です。

以上、ケースライティングのポイントについて前回から2回に分けて述べてきました。次回は、ケーススタディのファシリテートポイントについてご紹介します。

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